「24時間換気システム」とは、家の中の空気をつねに循環させ、健康的な室内環境を保つための設備です。結露やカビの防止、室内空気の浄化に役立つ設備ですが、システム選びやメンテナンスには注意が必要です。本記事では、24時間換気システムの種類や注意点などについてくわしく解説します。
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24時間換気システムとは
24時間換気システムは、1日中自動で室内の空気を換気するために設置される設備です。2003年の建築基準法の改正により、新築を含む全ての建築物に24時間換気システムの設置が義務付けられました。ここでは、24時間換気システムが義務化された背景や設置のメリットなどについて解説します。
24時間換気システムを設置する目的・メリット
義務化された背景には、現代の住宅が高気密・高断熱化している点が大きく関係しています。高気密・高断熱の住宅は、冷暖房の効率が上がる一方で、空気の循環が悪いために室内の空気が悪くなり、シックハウス症候群を引き起こしやすくなります。
シックハウス症候群は、建材や内装材から発生する化学物質や、室内に漂うダニ・ホコリが原因で鼻水や頭痛、湿疹などの健康被害を引き起こす現象です。
こうした被害に遭わないためにも、24時間換気システムは欠かせません。これを導入すれば、室内の空気がつねに外気と交換されるため、有害物質が滞留せず、シックハウス症候群のリスクが大幅に低減します。
24時間換気システムと全館空調の違い
よく24時間換気システムと混同されるのが「全館空調」です。たしかに、どちらも家全体に関連するシステムですが、その役割は異なります。24時間換気システムは「換気設備」であり、家全体の空気を外部と循環させることに主眼を置いています。
このシステムでは、温度や湿度の調整は基本的に行いません。一方で、全館空調は「冷暖房設備」であり、室内の温度と湿度を管理することを目的としたものです。
全館空調システムでは、家全体の空調を一定に保ちながら、部屋ごとの温度調整も可能です。また、全館空調は法律で設置が義務付けられているわけではありませんが、24時間換気システムは法律で必須とされているため、新築物件には必ず設置されています。
24時間換気システムの種類
現代の住宅において、快適な室内環境を維持するために「24時間換気システム」が導入されています。このシステムには、「個別換気」と「セントラル換気」の大きく分けて2種類が存在します。
個別換気は、各部屋に設置された換気扇を用いて効率的に換気を行うシステムで、セントラル換気は、天井裏や壁内部に設置されたダクトを通じて、家全体の空気を一元的に管理するシステムです。
さらに、それらは第一種換気、第二種換気、第三種換気の3つに分かれ、目的や設置環境に応じて選ばれています。
第一種換気
第一種換気は、外気の取り込みと室内の排気を両方ともファンで行う換気方式です。このシステムでは、機械的に空気の流れを制御できるため、計画的な換気が可能です。
また、熱交換器を組み合わせれば、室内外の温度差を最小限にしながら換気を行えるため、冷暖房の効率が向上します。設置費用や電力コストが高いのがデメリットですが、安定した換気を求める家庭には適しています。
第二種換気
第二種換気は、給気口にのみファンを設置し、外気を強制的に取り込む方式です。排気は自然換気に依存するため、室内は「正圧状態」になり、外部のほこりや花粉が入りにくくなります。
この方式は、おもにクリーンルームや食品工場など、衛生管理が厳しい場所で使われますが、住宅での採用はほとんどありません。
第三種換気
第三種換気は、排気口にファンを設置して強制的に排気を行い、給気は自然換気に任せる方式です。住宅において最も広く採用されているタイプで、室内の湿気を効率よく排出できるため、結露対策にすぐれています。
また、導入コストが低く、運用コストも抑えられる点がメリットです。ただし、気密性の低い住宅では、計画換気が不十分になる可能性があるため、注意が必要です。
導入の際に注意すべきこととは
24時間換気システムは、現代の住宅において室内空気の清浄化に不可欠な存在となっていますが、導入時にはいくつかの注意点があります。以下に、具体的な注意点とその対策をご紹介します。
運転音
24時間稼働しているため、機械音や換気扇の音が気になる場合があります。とくに静寂を好む方や寝室に近い場所に設置される場合、音の問題はストレスとなり得ます。
この対策としては、防音材やフィルターの使用、静音機能がついた機器を選ぶことが有効です。また、定期的にフィルターやファンを掃除・交換することで、運転音を抑えられます。
空調効率の低下
24時間換気システムは外気を取り込むため、外気温に左右されやすく、とくに寒冷や猛暑の時期には、空調が効きにくいと感じることがあります。
この問題を解決したいなら、熱交換器を備えたタイプの換気システムを導入するとよいでしょう。外気を室内温度に近づけながら換気することができ、冷暖房効率の低下を防げます。
電気代
24時間常時稼働するため電力消費が発生しますが、メンテナンスを怠るとフィルターが詰まり、換気効率が低下し、無駄な電力を消費する恐れがあります。電気代を抑えるには、フィルターの定期的な掃除や交換が重要です。また、消費電力が少ない機器を選択することも経済的です。
花粉・ほこりなどの侵入
24時間換気システムは、つねに外気を取り込むため、給気口から花粉やPM2.5などの汚染物質が室内に入り込む可能性もあります。これを防ぐために、高性能のフィルターを使用し、定期的に交換したり、空気清浄機の併用も有効な対策です。
また、強風や雨が激しい日には、外からの汚れや雨水が侵入する可能性があるため、24時間換気システムを一時的に停止する必要があります。ただし、停止時間が長くなると結露のリスクが高まるため、風雨が収まったらすみやかに再稼働させなければなりません。
まとめ
24時間換気システムは、住宅の快適性や健康を保つための重要な設備のひとつです。しかし、運転音や空調効率の低下など、導入時には注意すべき点がいくつかあります。適切な対策を講じることで、24時間換気システムを快適に運用できるので、導入前に業者と十分に相談しましょう。